人間複製機
「本当の事だよ。あたし、近くにあった石を掴んで弘樹の頭を殴りつけて、そのまま逃げたの。弘樹は頭から血を流してた」


そう言って手で口を覆って見せた。


「でも、それはマキが悪いわけじゃないだろ。悪いのは弘樹だ」


大雅がそう言うのを聞いて、あたしは隠した口元を緩めた。


本当の出来事に少しだけ嘘のスパイスを混ぜるだけで、出来事はこんなにも変化するんだ。


「弘樹の言いなりになった方がよかったのかもしれない。攻撃しちゃったから、弘樹は逆上するかもしれない」


「そんなこと……」


大雅は顔をしかめた。


「お願い大雅! あたしを守って! 学校にいる時だけでいいから、あたしを守って」


大雅の手を握りしめてそう言った。

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