人間複製機
陸人の言葉にクスッと笑った。


この、優しくて暖かな時間があたしは大好きだった。


いつかあたしは陸人と結婚する、子供の頃はそう信じて疑わなかった。


「ナオは?」


ニッコリと笑顔でそう聞いてくる陸人。


「今日はいないよ」


そう返事をすると、陸人はあからさまに落胆の色を見せた。


「いないのか……」


「なに? ナオに何か用事でもあったの?」


「そうじゃないけど、ナオと一緒にいると落ち着くんだよな」


陸人は悪びれる様子もなくそう言った。


その言葉にあたしはピクリと反応する。


「なにそれ、あたしとじゃ落ち着かないってこと?」


「そうじゃないけど、マキもナオもそれぞれの良さがあると思うよ」


それなら今ナオの名前を出す必要なんてなかったじゃないか。


そう思うけれど、言葉をグッと飲みこんだ。


せっかく複製させたんだから、嫌な雰囲気にはなりたくなかった。

< 134 / 211 >

この作品をシェア

pagetop