人間複製機
それは部屋中に広まっていき、ゆっくりゆっくり浸して行っていた。


どうにか体を起こそうとするものの、ビクともしない。


スライムはあたしの耳を塞ぎ、体を包み込み、すぐに顔まで浸してしまった。


あたしは顎をあげて鼻を突きあげ、呼吸だけを確保した。


スライムに包まれたあたしにはもう化け物の声は聞こえてこなかった。


目を固く閉じて、なにも見えない。


真っ暗な世界にたった1人。


そんな感覚だった……。
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