人間複製機
その笑顔にあたしは苛立ちを覚える。


「ナオ、あたしの話聞いてた? それ頂戴って言ったの」


そう言い、あたしはナオのぬいぐるみを指さした。


それは先日閉園してしまった遊園地の限定商品だ。


閉園してしまったから、もう二度と手に入ることはない。


ぬいぐるみなんて幼稚なもの正直どうでもいいと思っていたけれど、ナオがカバンに付けているのを見た瞬間欲しくなった。


ナオはあたしの言葉に困ったように眉を下げ、苦笑いを浮かべている。


「これはあたしも気に入ってるから」


「なんで? あたしも気に入っちゃったんだけど」


あたしはそう言い、ぬいぐるみに手をかけた。


「ちょっとマキ!」


ナオが焦った声を上げた時、あたしの頭上に誰かの手が置かれた。
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