人間複製機
「これ、頂戴。偽物ならいいでしょ?」


あたしがそう聞くと、弘樹は「もちろん」と、頷いた。


あたしは驚いて弘樹を見た。


いくらあたしの事が好きだと言っても、1万円札をすんなり渡して来るなんて思わなかった。


「もしかして、あのぬいぐるみもコピーしたの?」


「そうだよ。ぬいぐるみは元々1つしかなかった。それをコピーしたんだ」


弘樹が自信満々になって答えた。


でも、そんなのやっぱり信用できなかった。


あのぬいぐるみは偽物で、安く仕入れたものかもしれない。


このお金は遺産が入ったから少しくらい減っても構わないと思ってくれたのかもしれない。


そんな事悶々と考えている間に自分の家が見えて来た。


「あたしの家、ここだから」


「そっか。今日はありがとう一緒に帰れてうれしかったよ」


弘樹はそう言うと、大きく手を振って帰って行ったのだった。
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