人間複製機
これが本物かどうか、銀行で確認すればいいんだ。


銀行に到着すると幸いにもATMに人の姿はなかった。


ATMは紙幣認識ができるから、偽札なら自分の口座に入金することもできないだろう。


そう考えたのだ。


あたしはATMの前に立つと深呼吸をした。


ただお金を入金するだけなのに妙に緊張してしまう。


カードを入れて入金ボタンを押す。


そして弘樹にもらった1万円札を入れると、機械はそのまま1万円札を吸い取ったのだ。


口座残高を確認してみると、当然のように1万円が増えている。


あたしはゴクリと唾を飲みこんだ。


ATMがどのくらいの精度で紙幣を認識しているのかはわらからない。


けれど弘樹からもらったコピーされた紙幣は機械を欺くことができたのだ。


あたしは財布をグッと握りしめ、逃げるようにして銀行を後にしたのだった。

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