人間複製機
あたしは叫ぶようにそう言って弘樹の言葉を遮った。


そんな事、もう思い出したくもなかった。


あたしは複製機に手を伸ばす。


「なにするんだよ!」


弘樹が掴みかかってくる。


それでもあたしは複製機を離さなかった。


これさえあれば、これさえ手に入ればあたしは弘樹とキスなんてしなくて済むんだ。


「返せよ!」


弘樹が力づくで複製機を奪おうとする。


咄嗟にあたしは複製機を持ち上げていた。


弘樹が目を見開いてこちらを見ている。


その表情は恐怖で歪んだ。


けれどあたしは止める事ができなかった。


振り上げた複製機を弘樹の頭に勢いよく打ちつけたのだ。


弘樹は一瞬うめき声をあげ、横倒しになった。

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