この手で君を、抱きしめたくて
俺たちは各々が所定の配置についた。

俺の配置は大臣の真横、すなわち大臣の身に危険な事態が起こった場合…

そう、1番に身代わりになるべき配置と言えるだろう。


「一ノ瀬」

無線で笠原隊長に名前を呼ばれる。


「いいか、よく聞け。なぜ一ノ瀬がその配置なのか、勘違いしていそうだから伝えておく。その場所は命を投げ出して大臣を守る場所じゃない」


まるで心の中を見透かされたかのような笠原隊長の言葉に驚く。

「一ノ瀬が誰よりも戦闘能力に長けていて優秀で、お前なら大臣も自分も守れる、という私の判断だ。一ノ瀬、必要があれば、独断で銃を使用して構わない。責任は私が取る」

「隊長…」


「今回は、絶対に犠牲者を出さない」

そう言った隊長の声からは、強い意志が感じられた。


12年前のあの事件のことを…思い出しているのだろうか。
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