この手で君を、抱きしめたくて
「いえ、我々は命を懸け…」

そう言おうとする笠原隊長を遮り、神楽大臣が言った。


「そうすることが任務なのは百も承知ですが、皆にも家族がいるでしょう…大切な人のために、まずは自分の命を守ってください。私はその次で良い」


なぜ、彼が国民からの人気が高いのか、この数分で理解できた。

物腰が柔らかく、大臣だからと言って決して偉そうにしたりしない。

秘書への接し方も、他の政界の大物たちとは全く違った。


俺たち一人一人が簡単な自己紹介を終えると、大臣が再び口を開いた。

「本日、私は国際交流イベントに出席します。これが脅迫状が届いてから初めての公務です」
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