アウト*サイダー

 両側から容赦なく小突かれつつ、通話ボタンを押して聞こえた、彼が私の名前を呼ぶ低くて優しい声。

 聞き耳をたてる三人を肩で押し退けながら「ケイ、どうしたの?」照れ臭さにどうしても素っ気なくなってしまう私の声。

 三人が寄り集まって、私のしかめっ面をニヤニヤした顔で見つめている。居心地の悪さったらない。

『どうしたのって……酷くない? 俺は一日中ずっとハスミのこと考えて寂しい思いしてたのに』

 声だけでも分かる彼の拗ねた表情に、思わず吹き出していた。

『どうせ、俺のことなんか忘れて楽しく遊んだんだろう? いいよ、別に。はぁぁ、俺って、報われない彼氏だよね』

 なおもいじける彼を、はいはい、と宥める。

「まぁ、楽しかったよ。そうそう、須賀さんと篠田さんに偶然会ってね、また今度遊ぼうって話になったの」

 今日あった嬉しかったこと、楽しかったことを話す私に、ケイがとても不満げにだけど相槌を打ってくれる。ついでに、自分がどれだけ寂しい思いをしていたかを挟みながら。

 三人は私の少し前を歩いていた。背の高い須賀さんと篠田さんに挟まれたハルちゃんが、小さい子供にするように良い子、良い子と頭を撫でられている。

「本当に今日楽しかった。もうね、笑いすぎて腹筋が痛いくらい」

『そっか。良かったね』

 彼の声がいつもの優しい声に戻っていた。

 それを聞いた途端、悲しくないのに何だか泣きたい気持ちになった。
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