アウト*サイダー

 喉の奥から上がってきた感情を言い表す言葉は見つからない。でも悪い感情ではないのは分かった。

「去年は……全然、楽しくなかった」

 低くなった声のトーンに、ケイは『うん』とだけ返した。続きを促すでもなく、会話を終わらせるでもなく、ただ私の話を聞き入れてくれるもの。

 私は前の三人がわちゃわちゃとふざけあっているのを見て笑った。

『ハスミ?』

「ううん、何でもないの。……皆と同じ学校に入れて良かったなって思ったの」

 もう数メートル先に駅が見えていた。篠田さんが何かを言って、突如始まったかけっこ。先を走った篠田さんを須賀さんとハルちゃんが追いかける。

『皆の中に、俺も入れてくれてる?』

 ちょっと不安そうに、心配そうに彼が尋ねた。

「皆の中ではないかもね。ケイは最初から特殊な存在だったから」

 笑いながら答えた私に、電話の向こうで悩ましげに唸る声がする。ケイは私の悪戯心をくすぐって仕方ない。彼の特技と言っても良いくらいだ。

「私にとって、それだけケイが特別だってことだよ」

『えっ……あ、そっか……うん、ありがと』

 戸惑うような声に首を傾げる。そんなに喜んでいるように聞こえないことに、少しガッカリする。

『うん、そうだな。俺もハスミに出会えて良かった。俺の人生の、最大の幸運を使ったと断言できるよ』

 彼の言葉ひとつでたちまち気分が高揚する。

 昼間の暑さがまだ残るアスファルトから発せられる、生温く肌を覆う熱。首筋に汗がつたった。
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