シンシアリー
ところで、学校に通うには、お金が必要だ。
医学は比較的門戸が開かれているため、他の学問よりも学費は安く、それ故にいわゆる庶民の生徒も多かったが、論理学には、高貴な家柄の令嬢や貴族、爵位を持つ子息等が、意外と多く集まっていた。
庶民にとって、哲学的な思想や論理的な話し方を身につけることより、怪我や病気の対処法や植物の名前と効能を学んだほうが、暮らしの上で役に立つからだ。
結果、修辞学程ではないが、論理学にも上流階級の「コミュニティー」と「コネクション」が、おのずとできる。
政治に直接関わることはできなくても、自分の父親が国を統治しているため、その目で見て、肌で少しは感じる環境で育ったレティシア姫は、「上流階級の人々が国を動かしている」ということを、敏感に察していた。

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