シンシアリー
歪んだ母子
南から南西部にかけて群生しているクワの樹エリアのうち、南西部の一部を蚕専用の地とすることになった。
そこを桑畑にし、近くに工場を作るために、男手が必要とされた。
蚕の繭から絹糸を取るのは、武骨な男手よりも繊細な女の手が必要とされる。
結果、町の人々の働き口が増え、新しい産業進出への意欲に町も活性化された。

蚕の育成は比較的簡単だったが、繭から絹糸を取り出す作業や、絹糸を織り、製品を作っている仕事を確立させることは、意外と困難を極めた。
それでもこれらのことは全て、レティシア姫の想定内。何も知らない、分からない、つまりど素人の状態で事に着手するのだから、最初からすんなり上手くいくはずがないと、彼女も分かっている。
とにかく4年努力すれば、養蚕業は必ず軌道に乗るという想いの元、姫は養蚕業に関わる全ての人と蚕を信じて学業の傍ら、養蚕場にも頻繁に出向くようになった。

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