シンシアリー
そんなヘルメースは、12歳のときから「性」に目覚めた。
母親に溺愛されて育った影響か、ヘルメースは年上の女性を好んだ。それも、自分の母親くらいの年齢で、ちょっと肉付きの良い女を。やせっぽちの女は叩き甲斐がないからだ。
最初、ヘルメースは公邸内の女中たちに目をつけ、さらには手を出すことで、現状の色々なことに対する“苛立ち”を発散させた。
しかし公邸内は広いようで、狭い。彼に対する“邪悪な噂”は静かに広まっていく。
ゼノス大公の耳に入る前に、これ以上問題を深刻化させてはいけないと考えたアレッシア現公妃は、ヘルメースを町はずれに佇む娼館へ、密かに通わせることにした。
彼の暴力めいた性欲を、そこの娼婦たちで解消してもらうというアレッシア発案の苦肉の策は、どうにか功を成したが、これは明らかに、母親としての歪んだ配慮だった。

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