シンシアリー

春の手前の季節だからか、外はまだ寒い。
そのせいか。それとも、墓人たちの“知らせ”を感じ取ったのか。
レティシアは、不意にブルッと身震いしながら、細い両腕で自分を抱きしめた。
すかさずユーグは、「姫様。そろそろ公邸へ戻りませんか？ここは冷えます」と切り出す。
レティシアは、渋々と言った感じで頷いた。

切ない顔と声で「・・また、明日」と呟きながら、まるで生きている人の頬を撫でるように、優しくそっと、セイヴィアーの墓を撫でるレティシアを見たユーグは、彼女を思いきり抱きしめたいという衝動を押さえつつ、そして彼女に対する愛おしい気持ちを、どうしようもなく募らせながら、絞り出すような声で「はい」と言った。

・・・明日。また来ます。父上・・・。