シンシアリー
全てを新たに
勢いよく部屋から出てきた男性は、自分の目の前にレティシアとユーグが立っている(この時にはもう、ユーグはレティシアから手を離していた)ことに気づくと、「失礼」と言って、スタスタと歩いて行ってしまった―――。

それからすぐに同じ部屋から出てきたのはロバート・クリストフ宰相だった。

「待って・・・あ。これはこれは。王妃様ではありませんか。何か私に御用でしょうか」
「そうね。用と言うより、今日予定していたルクソスの訪問は延期する旨を伝えておこうと思ったんです。国王様が体調を崩されたので」
「その事でしたらプリヤから聞いております」
「え?あぁ、そうだったの」
「国王様のご病気が早く良くなると良いですね。では」

一刻もその場から離れたいのか。
どこかしら焦った様子のクリストフ宰相は、サッサと用件を切り上げると、スタスタと歩き出した。
しかしレティシアは「宰相!」と言って、彼を呼び止めた。
クリストフ宰相は、立ち止まりはしたが、その場でクルッとふり向き「はい」と答えた。
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