シンシアリー
その日の夕刻に着いたタスカニアで一夜を明かすことにしたレティシアたちは、王宮程豪華ではないが、清潔感溢れる空き部屋の1つを借りることにした。

朝は罪人を二人も糾弾し、午後には友人たちと別れて国を出発した。
二人とも心身共に疲れているが、お互いに愛し合っていると分かった今、心は幸せで満たされ、気分は高揚している。
食事を摂り、たくさん話をして、楽しく笑っている間に、夜も更けていた。

「そろそろ寝ましょうか」
「そうね。あの・・あかりを消しても良いかしら」
「もちろん。俺が消しますよ」
「いえっ、いいのっ。私が・・」

自分が蝋燭の灯を消そうと左右に動いた二人は、お互いの正面に立ってしまって、先へ進むことができない。
ユーグが大きな手をレティシアの二の腕に置いたことで、ぎこちなく動いていた二人は、やっと止まった。

「・・俺のことが怖いですか」
「あなたのことはずっと信頼しているわ。そして・・・愛してる。ユーグ、私を愛して」

ダイレクトで端的なレティシアの言葉、切ない表情、潤んだ瞳・・・全てに煽られたユーグは、短く息を吐いて吸うと、レティシアを引き寄せて、キスをして・・・。

二人は初めて結ばれた。
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