シンシアリー
風変わりな姫、変革をはじめる
「こんな境遇にいる貴女様だからこそ、できることが必ずあるはずだと信じております」というセイヴィアー騎士長官の言葉は、レティシア姫の心に深く染み入った。
いつもセイヴィアーは、レティシアのことを「姫」として敬い、父親のように優しく愛情を注いで接してくれるからこそ、レティシアにとってその言葉は、姫として生きる使命を探求するきっかけとなったのだろう。

レティシア姫は、ますます読書に励むようになり、本からどんどん知識を仕入れた。
本を見ながら文字を書くことも、独自に会得した。
その傍らで、知識を得たことで満足して終わっていては、今までと同じだと思った姫は、行動範囲を広げた。
公邸で働く女中たちからは、きちんとしたベッドメイキングの仕方や針仕事を、厨房に行けば、火のおこしかたから、じゃがいもの皮のむき方、豆のさやの取り方や、スープの作り方、そして肉やパンの焼き方を。
銀器を磨く執事の手の動き、何を使って磨いているのか、植物の手入れをしている庭師を見ながら、庭にはどの季節にどんな花が咲いているのかを実際に見て、自分の知識としていった。

< 44 / 365 >

この作品をシェア

pagetop