シンシアリー
論法勝ち
北部の学校で2年間、医学を学んだレティシア姫は、そろそろ新たな学問を学ぼうと思った。
そこで姫が最初に目をつけたのは、修辞学である。
修辞学とは、演説の技術を指す。
聞き手(聴衆)が思わず惹きつけられる内容を話すことは、もちろん必須だが、他にも、話し手(演説者)の語り方や声音、演説の主旨に合った身振りの仕方、聴衆の心理操作等の技術的な面も磨いて、自分の演説を、より引き立てる方法を学ぶ。
姫は、堂々としたふるまいや、一人でも大勢でも、とにかく人前で物怖じせずに、自分の意見をきちんと言えるようになりたくて、修辞学を学びたいと思ったのだが、父親のゼノス大公は反対した。
理由は「修辞学は政治的要素が強いため」。
実際、修辞学を学んでいるのは、貴族院議員の子息ばかり。言い換えれば、修辞学というところは、将来、父親の後を継いで議員になる貴族の男性が、演説技法を学ぶ学科なのだ。
だから修辞学に、女性の生徒は一人もいない。
このことも、ゼノス大公が反対した理由の一つである。

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