シンシアリー
いくら純粋な“動機”を並べ立てても、修辞学を学ぶことをゼノス大公が反対することくらい、レティシアにも最初から分かっていた。
アレッシア現公妃の“言いがかり”に関しては・・・「ほぼ予想通りだった」と言ってもいい。
それらを覆してまで、修辞学を学ぼうとは思っていなかったレティシアが、次に狙いを定めたのは、論理学だったのだ。
但し、論理学も議論を交わすという点において、政治的要素が全くないわけではない。
相手を納得させる話術がなければ、議論を交わすことすらできないからだ。
だが論理学の場合、修辞学よりも哲学的要素が濃い。
レティシアの論理学行きに、ゼノスが賛成する確率は、正直なところ、50パーセントだったが、それを100パーセントにするために、まずは修辞学を持ち出す―――。
いわばレティシアの「賭け」ではあったが、結果は見事に勝利を収めた、というわけだ。

レティシアは、控えめに笑みを浮かべながら、敬虔に「そう致します、お父様」と答えた。

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