ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
 その後、データが全て無事に残っている事がわかって、ひとまず胸を撫で下ろした。最悪の事態はどうやら避けられた様子。

「電波干渉を防御するシステムが暴走ぎみに働いて再起動したんだろうね。強電磁場までは想定してなかったからさ」

と控え室で椅子に腰掛けながら声を上げる所長。

「そんな環境に行くとは思ってませんでしたし。この際、シールドを強化して装着し直した方がいいかもしれませんよ」

「でも局長が許してくれるかしら。皮膚を剥がしてとなると、またかなりお金を使うことになるけど」

並んで腕を組んで立っていたクワンのセリフが気になった。

「お金が掛かるのか…」

呟くと、所長が続けてきた。

「素直にウンって言わないだろうなあ、局長のことだから…」

頭の中にフッとふてぶてしい局長の顔が思い浮かんだ。予算が無い事にはボクらはなんにも出来ない、所長にそう言わせたあの局長の顔だ。

「局長にまたブツブツ言われながら頭を下げなきゃイケナイ訳か。嫌だな~」

事務局のピリピリした雰囲気はもう味わいたくはない。

「そりゃボクだって同じだよ」

と眉を顰める所長。

「でも所長、今後再発しないように対策は施しておかないと、また…」

もう心配しなくて済む様にはして欲しい。と、続けようとした本田君の声を遮るように所長が口を開いた。

「対策はハードでしか出来ないワケじゃない。ソフトでも出来るだろう?」

とニッコリ微笑む所長。

「ソフトで?」

「そう。電磁波の感知は出来るんだからさ、今後はそういう場所に近づかないようにプログラムを追加すれば、解決さ」

と指を一本突き立てる所長。なるほど、それならお金は掛けずに出来そうだ。

「確かに。ではさっそくプログラムを考えましょう」

「忙しくなるわね」

と、日付が変わった午前三時、無事に復活したミライと一緒に所長に送られて、僕は部屋へと帰り着いた。
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