ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
「ねえセンセ、一つお願い聞いてくれる?」

と僕の肩の上で首を傾げる広海君。こんなにベタベタしてくるなんて初めてだ。

「ん、ああ、何?」

「今から付き合って欲しいの」

エッ?付き合ってって?

「ちょっと買い物に行きたいの。ね、いいでしょ」

なんだ買い物か。それはいいけど、でも、

「今から?」

まだ定時まで1時間以上もあるんだけど。

「いいじゃない。どうせ教授もいないんだし、黙ってればわからないって、ね」

って、堂々と教職員をサボリに誘うなよ。

「だけどさ、」

と渋ろうとした途端、広海君が首に絡めた腕に力を込めて僕を体ごと左右に揺さ振ってきた。

「ねぇいいじゃないセンセー、ねぇねぇ」

マッタク、言い出したら聞かないんだから。

「わかった、わかったよ」

と頷くとようやく腕を解いてくれた。

「ヤッタ♪先生大好きっ。早く行きましょ」

と途端に笑顔を見せた広海君に引っ張られて、買い物に付き合わされる事になった。
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