ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
「もし、今の社会制度の中にそのままロボットを組込もうとすると、それはそれはおかしな事になるな」

とニッとニヤける教授。

「どういうことですか?」

例えば?

「ロボットが車を運転出来るかどうかで、使う現場でのロボットの有用性が大きく変わってくる。かといって、ロボットに人間と同じ運転免許を試験を受けて取らせようとしたら、どうだ」

とメガネの奥の目を輝かせる教授。

「どうって、試験は受かりそうな気がしますけど」

ミライやロイの出来なら。

「ところが、だ。免許証には住所と本籍地、生年月日の記載がある。問題はここだ」

そうか。戸籍が必要になってくるのか。

「ロボットに免許証を発行する為に戸籍や住民票を作る、その為には出生届が要る。ロボットの出生届なんてバカバカしい話だが、仮に出生届を受け付けてくれたとして、生年月日はその日になる。つまりそれから18年間は免許を取れない事になる」

なるほど。こんなに立派な大人のミライでも、まだ0才児だから免許は取れないと。

「当たり前だが、ロボットに人間の規則を当てはめるなんて事がそもそも無理な話だ。ロボットの為の新たな制度が必要なんだよ」

と、教授がパッと両手を広げて続けた。

「さあロボットは出来た、でも法律が無いから使えません、じゃ、人生を懸けて開発してきた開発者たちは一体何をしてきたんだ、という事になる。もはやロボット開発は、技術的な問題だけでは済まない所まで来た、という事だ」

と、教授が膝に手をついて、ジロッと僕を見た。

「そんなロボット開発の最先端を、今、君が担っているという事だよ。…余計な事に心割いている暇はないぞ」

と微笑みかけてくる教授。

「…そうですね」

改めてミライの存在が大きく膨らんだ。だけど、

(余計な事って、広海君の事だよな…)

そう言われた広海君の存在が、心に引っ掛かって消える筈もなかった。
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