ふたりの彼女と、この出来事。(旧版)
「うれしいっ…」

とギュッと強く抱きついてくるミライ。背中に廻った腕や大きな胸が柔らかく僕を包み込んでくる。

(あったかい)

ジンジンと熱くなっていく温もりに思わずミライを抱き締め返した。と、ミライが頭をコツンと僕の頭に添えてきた。

「いつも傍にいるからいつも笑顔。これからもずっと」

と耳元で囁くミライの声。

(そうか)

ミライは僕の事をずっと傍で見ていてくれたんだ。

(僕が広海君をずっと見ていたように、ミライは僕の傍でずっと僕の事を…)

今になって気付いた。

(どうしよう、)

気持ちが昂ぶってくる!

「ミライッ」

首を引いてミライの顔を間近に見つめる。ミライの艶っぽい微笑みが目の前にある。

「…」

真っ直ぐ見つめる、涙の残るミライの瞳。温もった肌からは石鹸の香りがほのかに香る。と、ミライがフッと瞼を閉じた。一瞬で理性と衝動が身体の中を駆け巡る。

(わかってる)

でも、ミライの熱い想いにも応えたい。

(…キスぐらいなら、毎朝してる事だし)

少し開いた艶やかな唇に、愛おしさを乗せて唇を重ねる。

「…ンッ」

吐息が熱い。唇が離れない。唇を吸い合い、舌が絡み合う。

「ああ…」

止められない。手が動き指が動き、心が動く。

(どこまでミライは…)

確かめるように、パジャマをたくし上げて火照った肌を指先で撫でていくのを、止められなかった。
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