探偵喫茶へようこそ


喫茶店に全員が集まったのは、あたりが真っ暗になったころだった。



夢里と洋一が並んで座り、向かいに知由が座っている。



他の六人は話の邪魔にならない、かつ話が聞こえる場所に座っている。



「……もう、演技は通用しないんだよね」



夢里がおずおずと口を開く。



「ああ、そうだ。絶対に演技するなよ。あたしは真実が知りたいんだ」



知由はもともと用意していたコーヒーを喉に通す。


その仕草と雰囲気は、知由を子供とは思わせない。



二人は大人びている知由に、驚きが隠せない。



それから沈黙のときが流れる。



その沈黙を破ったのは、夢里だった。



「……洋一くん、どこから話したらいいのかな?」


「そりゃまあ……全部だろ」


「長くなるね」



夢里は苦笑する。



「しょうがない。九年以上分の話なんだから」



そしてなぜか二人の世界に入ってしまった。



「……おい。早く始めろ」



知由は求めてない展開に、腹を立てた。


実の親であっても睨むあたり、知由らしい。



「ごめんね、知由。えっと、私が知由を妊娠したときから話すね」



そして二人の過去、知由が施設に預けられた理由が語られる。

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