探偵喫茶へようこそ


そこまで言われても、夢里は返すにふさわしい言葉が見つからなかった。


でも、このまま自分が授かった命を失うわけにはいかなかった。



そこで、自分の思ったことを素直に言うことにした。



「……お母さんが正しい。でも、私は……私のところに来てくれた、この子を失いたくないの。お母さんが私を大切にしてくれたみたいに、私もこの子を大切にしたい」


「夢里……」



まさか娘がそう思ってくれていたとは、予想していなかったため、こんなときだというのに、京子は喜んでしまった。



「お母さんにこのことを話したのは、お母さんに力を貸してほしいからだよ。出来るだけ、自分でやる。でも、出来ないこともあるから……お願いします」



そうして、夢里と洋一は頭を下げた。



「わかったわ。その代わり、一つ条件を出す。高校を卒業して、夢を叶えなさい」


「……え?」



出された条件が意外なもので、気の抜けた声を出してしまった。



「あなたに名前の由来通りの子に育ってほしいのよ、私が。夢を叶える努力が出来る、穏やかな子に」


「お母さん……」


「少しくらい、親孝行しなさい」



京子はしょうがないというように、笑った。



「ありがとう」



夢里は本当に感謝の気持ちでいっぱいになった。


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