探偵喫茶へようこそ


しばらく歩くと、建物の前に到着した。



「本当に古いな。今にも崩れてしまいそうではないか」


「うん……」



心ここに在らずな滋に降ろしてもらった知由は、建物を見つめる。


建物自体は木製で、壁のあちこちが傷んでいた。


それにもかかわらず、まだ崩れていないのは、誰かが手入れをしているからだろう。



「夏芽……お願い、ここにいて……」



滋がドアを開けると、音が鳴った。



本当に、壊れてしまいそうだ。



そして中を見たが、誰もいない。



「そんな……」



滋は中に入ってすぐ、落胆した。


建物の中は、隠れる場所がないくらい、見渡しがよかった。



しかしまあ、中もまた、古い。


椅子も、テーブルも、すべて。



「滋。机の上に何かあるぞ」



部屋を見て回っている知由に言われて、机の上の物を手に取る。


それは、手紙と花束。



「どういうこと……?」


「見せてみろ」



知由は固まっている滋の手中から、手紙を奪う。


それは、夏芽からの手紙だった。

< 14 / 156 >

この作品をシェア

pagetop