探偵喫茶へようこそ
しばらく歩くと、建物の前に到着した。
「本当に古いな。今にも崩れてしまいそうではないか」
「うん……」
心ここに在らずな滋に降ろしてもらった知由は、建物を見つめる。
建物自体は木製で、壁のあちこちが傷んでいた。
それにもかかわらず、まだ崩れていないのは、誰かが手入れをしているからだろう。
「夏芽……お願い、ここにいて……」
滋がドアを開けると、音が鳴った。
本当に、壊れてしまいそうだ。
そして中を見たが、誰もいない。
「そんな……」
滋は中に入ってすぐ、落胆した。
建物の中は、隠れる場所がないくらい、見渡しがよかった。
しかしまあ、中もまた、古い。
椅子も、テーブルも、すべて。
「滋。机の上に何かあるぞ」
部屋を見て回っている知由に言われて、机の上の物を手に取る。
それは、手紙と花束。
「どういうこと……?」
「見せてみろ」
知由は固まっている滋の手中から、手紙を奪う。
それは、夏芽からの手紙だった。