探偵喫茶へようこそ
喫茶店のマスターをしている住吉雪兎は、コップを拭きながら言った。
「いや、いい。こうなること予想せず貸したあたしも悪かった」
「そもそも、ハッキングされないようにしておくのが普通だろ」
客が食べ終えたお皿を下げてきた新田海が、知由を嘲笑った。
「黙れ、クソ悪魔」
「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ」
知由と海の間には、火花が飛び散っているようだ。
「ちょっと、お客さんまだいるんだから、喧嘩したらダメだよ。みさきちゃんも、大声出さない」
知由の頭に手を置いたのは、櫻井滋。
「……ごめん」
この喫茶店を大事に思っている知由は、素直に謝った。
すると、ドアベルが鳴った。
腰エプロンをした一弥が接客をしようとするも、客は一弥に目もくれず、海のもとに行った。
「お久しぶりです、新田さん」
そう言った女性は微笑んだ。
海の知り合いが来るなど、一ミリも思っていなかった喫茶店従業員は、動きを止めた。
「ご無沙汰しています。こちらにどうぞ」