探偵喫茶へようこそ
そんな四人をよそに、海は彼女を席に案内する。
「海の知り合い? 美人だな」
彼女がメニューに目を通している間に、輪に戻ってきた海に一弥がこっそり聞いた。
その質問の答えに、滋も知由も、雪兎も興味津々だ。
「会社の元同僚だ。お前らが思っているような関係じゃない」
海は二年前まで会社員だった。
しかし、わけあって退職し、今この喫茶店に勤務している。
「なーんだ、つまんないの」
滋は口を尖らせた。
そんな滋の頭を、海は小突く。
「すみません」
すると、彼女の声が聞こえてきた。
「今行きまーす」
滋が海よりも先に動いた。
海は客に気付かれないよう、ため息をついた。
「コーヒーを一杯」
彼女はメニューを滋に手渡した。
「かしこまりました。あの、海……新田のお知り合いなんですよね? 名前を聞いてもいいですか? 僕は櫻井滋って言います」
「宮野梓(みやのあずさ)……ですけど……」