探偵喫茶へようこそ
一足先に飲み終えた一弥は、カップをさげ、洗う。
「どうせ、雪兎にラビットを名乗らせた理由と似たようなもんだろ」
パソコンの電源を落とした海が、冷たく言う。
知由が雪兎にラビットを名乗らせた理由。
それは、子供の言うことを大人が聞くはずないから。
怪盗乱魔を捕まえたかった知由は、なんとしてでも警察の捜査に協力できる状況を作りたかった。
そのため、身近にいた雪兎を上手く利用したというわけだ。
「ま、そんなもんだよなー。そうだ。雪兎、ちょっと出かけてくる」
「あ、行ってらっしゃい」
一弥はスマホをポケットに入れ、外に出ようとした。
「一弥。出かけるなら、あたしも連れて行け」
そんな一弥の背中に、知由は呼びかけた。
一弥は思いっきり顔をしかめて振り向いた。
「……なんで」
「いいから」
知由は一弥の主張を聞き入れることなく、そのままついて行った。
一弥の用は、ただの買い物だった。
割引された春服を何着か。