探偵喫茶へようこそ


「……星名来実(ほしなくるみ)です」


「種村沙月(たねむらさつき)」



二人の名前を聞き、知由は何も言わなくなった。



「ちょっと、何か言いなさいよ」



知由の自分勝手すぎる行動に、友奈はイライラがピークに達しかけていた。



だが、知由の耳に友奈の声は届いてなくて、知由はただただ考え込んでいた。



『親元に返してやる』



知由のその言葉を聞いたからか、ほかの子たちは黙って見守っている。


その結果、沈黙の時が流れるだけだった。



「中矢」



すると、知由は何かを思いついたらしく、笑みを浮かべて友奈を呼んだ。



「……何」



普段通りに呼ばれたら、睨み返していた。


でも、今見ている知由の笑顔がどこか恐ろしくて、友奈は戸惑った。



「ここから抜け出すために、お前に犠牲になってもらうぞ」


「えっ……はあ!? ちょっ、何考えてんのよ、この馬鹿!」



友奈がそう叫んでいるのに、知由は聞く耳を持とうとしない。


それどころか、楽しそうに笑っているだけだった。


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