夢の言葉と約束の翼(上)【夢の言葉続編⑤】
【6月15日/港街】

「……お待たせ。ほら、飲みな?」

狭い軒下。
ダンボールが濡れないようにさしていた自分の折り畳み傘笠をズラして中を覗くと、小さな黒い子猫が僕を見上げて「みぃ」と鳴いた。

近くのパン屋さんで買って来たホットミルクを、サンドイッチが入っていた容器の蓋を皿代わりにして注ぎ、子猫の前に置く。

子猫なんて飼った記憶のない僕にはどうしてやっていいのか分からなくて不安だったが、子猫はミルクの匂いをクンクン嗅いだ後にペロペロと舐め始めた。
その様子を見て、ホッと一安心。


……でも。
この後の事を考えて、僕の心はすぐに曇った。

何故なら、僕にはこの子猫を飼ってやる事など出来ないのだから……。

まだろくに仕事も出来ない。
自分で自分の生活すら出来ていない僕が、子猫を飼ってやれるはずがなかった。
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