悪魔の囁きは溺愛の始まり
「青山、悪いけど…………俺にもある。」

「………そうですか。」


ショックだった。

渡部さんも同じだった。

女なら誰でも………って思ってしまう。

『結局、男の人の好き』って何?

『付き合う』って何?


「理解できません。」

「………。」

「岡崎部長も渡部さんも理解できません。」


渡部さんを睨んだつもりが視界が歪む。

頬を溢れ落ちる涙に唇を噛み締めた。


「理解できません。」

「………。」


無言の渡部さんに背を向けて会議室を出ていった。

『割り切った関係』って何?

それって必要?

急ぎ足で女子トイレに逃げ込んだ。

定時退社の時間はとっくに過ぎている。その上、金曜は早めに退社する社員が多い。

誰もいない女子トイレの鏡を睨みつける。

こんな事では泣きたくない。

唇を噛み締めて溢れ落ちそうになる涙を堪えた。

鏡の中の自分へ問い掛けてみる。


「彼女と私は違うの?」
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