悪魔の囁きは溺愛の始まり

「喧嘩してる最中なんでしょ。」


「ははっ、一花はやっぱり最高だな。俺と結婚なんて嬉しいだろ？俺、御曹司だし。」


「他の女は喜ぶんじゃない？」


「その話は終わりだ。」



結局、二人でランチに出掛ける。


見るからに私は怒ってる筈なのに、気にする様子もなく、私と手を繋いで歩いている。


会社の近くにあるレストランに入る。早めの時間もあり、席は空いていた。



「蒼大さんは狡いです。」


「何が？」


「父を味方につけた。」


「一花が悪いんだろ。」


「はっ？何で？」



席に座るなり、私と蒼大さんの言い合いが始まった。


父を味方につける蒼大さんに腹が立ったからだ。



「一花が逃げるからだろ。」


「蒼大さんに幻滅したから。御曹司だからって、何をしても許される訳じゃないから。」


「悪い事はしてない。」


「やっぱり結婚とかはなしにして。この先も同じような女を作りそうだから。」



私から冷たい声が吐き出された。


目の前に座る蒼大さんが睨んでいるが、無視して水に手を伸ばした。