悪魔の囁きは溺愛の始まり
「あの………ご注文は?」



店員さんの声に我に返り、にっこりと微笑んだ。



「一番高いランチを2つ。」


「はい、畏まりました。」



店員さんがチラリと蒼大さんを見ている。笑みを浮かべる蒼大さんに見入っているようだ。



「彼女の注文通りで。声が大きかったかな?ごめんね?」


「あっ、いえ、大丈夫です。」


「そう?気を付けるから。」


「いえ。」



別人のような対応を見せる蒼大さんに呆れる。


私の前と他の人の前では本当に別人だ。



「胡散臭い笑み。」


「一花も見たい?」


「見たくない。」



蒼大さんから視線を外したまま答えるが、手が伸びてきたと思ったら、頬を両手で挟まれて視線を合わせられた。



「逃げたのは一花だから。」


「逃げたくなるような事をしたのは蒼大さんでしょ。」


「ハワイで一花が逃げた結果だ。」



それを言われると言い返せない。


ハワイでの出来事は私も悪かったと思っているからだ。
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