悪魔の囁きは溺愛の始まり
「………やま、青山、おい。」

「えっ?」


呼ばれた声に渡部さんを見れば、怪訝な表情をしている。


「大丈夫か?休みボケか?」

「違います。大丈夫ですよ。」

「ボーっとして上の空みたいだったぞ。」

「考え事です。ほら、仕事も大詰めだし、ハワイで見てきた店を思い出してただけです。」

「ふ~ん、まあ頑張れ。」


気のない声色に『本音か』と疑いたくなる。

私も気持ちを入れ替えて仕事をしなくては!


「明後日は会議だが、あんまり見せつけるなよ、青山。」

「そんな事はしません。」


この言葉が嘘になるとは予想もしていなかったが……。

仕事初めの今日はお互いが忙しくて会えそうにない。

蒼大は一応部長と言う立場だし、年初めは何かと忙しいみたいだ。

でも不安になる必要はない。

ブラウスの下で揺れる指輪を軽く握りしめる。

『肌身離さずに指輪をつけろ。俺の婚約者の証だから』

今では甘い囁きだ。
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