悪魔の囁きは溺愛の始まり
青山インテリアは代々続くインテリア会社だ。インテリア会社にしては大手企業に入る。

その娘として生まれたのが私だ。青山一花(あおやま いちか)26歳、入社4年目のインテリアデザイナーだ。

兄である青山海翔(かいと)が経営を継いでくれたお陰で好きなデザイナーの道を選んだ。


「青山、今日のマリンコーポレーションとは古い付き合いだ。」

「はい。」

「春に新しく部長になった人がやり手らしい。」

「へぇ~、そうなんですね。」

「今日はその部長が出席する。粗相のないように対応しろよ。」

「はい。」


渡部さんが真面目な声で話す。よっぽど怖い感じの人なのだろうか。

チラリと隣の渡部さんを見上げる。


「頑固な年配の方でしょうか?」

「いや、若いらしい。」

「若い…………。」

「青山、若くてもマリンコーポレーションの部長だからな。」

「はい。」


暑い陽射しが照り返すアスファルトを歩き、やっとマリンコーポレーションのビルの前に到着した。

聳え立つビルを日傘を傾けて見上げる。
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