悪魔の囁きは溺愛の始まり
琴音には『本気になるな!』と念を押しておきたかった。


「ごめん、お手洗いに。波、音、一緒に行かない?」

「「うん。」」


女子3人でお手洗いに行こうとしたが―――


「なら、ビーチから出てショッピングモールの方に移動しないか?」

「おお、そうだな。片付けて移動しようぜ。」

「蒼大、悠祐、ちょっと待て。彼女達、トイレに急いでるだろ?」


なんか変な方向に話が進み始めた。私は別に急いでお手洗いに行きたい訳ではない。

ただ琴音に念を押したいだけで。


「花ちゃん、急ぎ?」


蒼大さんの胡散臭い笑みに顔が引き攣る。きっと分かりきって聞いてきている筈だ。


「蒼大、花ちゃん達は急ぎだろ?」

「待たせるのは悪いだろ。」

「いえ、大丈夫です。」


そう答えるしかないだろう。

彼らは間違いなく策士だ。


「なら片付けてから一緒に移動しようぜ。」


勝ち誇ったような笑みを浮かべる蒼大さんから視線を外し、私達は荷物を整理し始めた。
< 27 / 200 >

この作品をシェア

pagetop