悪魔の囁きは溺愛の始まり
手を繋いで夜の散歩をしながら、蒼大さんの部屋へ向かう。


「初めてだな、花と二人で夜の散歩するのは。」

「うん。」

「俺、本当は『一晩一緒に過ごしたい』って誘った事を後悔してる。」

「なら帰ろうか?」

「花は緊張してない?俺は半端なく緊張してる。何もしない自信がなくなってきてる。」

「………。」

「ごめん、でも本当に緊張して寝れないかも。」


チラリと隣を歩く蒼大さんを見上げる。照れ笑いしているのが分かる。

繋がれた手に力を籠められた。


「でも帰さない。花、連絡先を教えて?」

「連絡先?」

「東京でも会いたい。携帯を教えて?」


蒼大さんの目と目が合う。


「ダメか?」


自信なさげな表情が胸を締め付ける。蒼大さんとはバカンスだけの恋人だ。

蒼大さんも東京に帰れば、バカンスの恋は忘れていくだろう。

お互いが現実の世界に戻るのだ。

『ひとときの恋』なんて忘れていくだろう。
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