お見合い結婚時々妄想
お義母さんは
「祥子が戻って来る前に化粧直ししてくるわ」
と、化粧室に行った


しばらくすると、父だけレストランに戻ってきた


「祥子さんは?」
「あぁ、ちょっと化粧室に……加山さんは?もしかして……」
「うん、化粧室……って」


顔を見合わせて2人揃って口を開いた


「泣かせたのか?」
「泣かせたの?」


お互い呆れた顔をしてため息をついた


「お前、加山さん泣かせるなんて……馬鹿じゃないのか?もし、破談になったらどうするんだ?父さんは祥子さんじゃないとお前の嫁とは認めんからな」
「父さんのせいで、祥子さんが僕と結婚するのが嫌になったらどうするつもり?泣かせるなんて……僕は婿入りしてでも、祥子さんと結婚するからね。そして、父さんとは会わせないから」
「何だと?やっと娘が出来るというのに、会わせないつもりか?」
「ああ、会わせない」
「この親不孝者!」
「うるさいな!」


口喧嘩をしていると、祥子さん達が戻ってきた


「どうしたんですか?2人とも」
「祥子さん、何か父に酷いこと言われなかった?ごめんね?」
「えっ?大丈夫ですよ慎一郎さん。私が勝手に泣いただけですから。ね?お義父さん」


お義父さんと呼ばれたことが余程嬉しいのだろう
満足そうに笑っていた


「あっそうだ、祥子。さっきお店の人に聞いたんだけど、ここ、隣の敷地で結婚式もできるそうなのよ。慎一郎さんと見学してきたらどう?」
「そうなんですか?慎一郎、2人で行ってきなさい。父さんと加山さんは、適当に帰るから」


それから父と義母は一緒に帰って行き、僕達は結婚式場を見学することにした
すごくいい結婚式場で、2人して気に入ったので、大安か友引で一番早く予約がとれるのはいつか聞いたら、今から4ヶ月後がちょうど土曜日でキャンセルが出たと言うので、早速予約をした
見学しているときも、相変わらずトリップして、百面相している彼女が可愛くて、僕もずっと笑顔でいられた
その途中、父と何を話したのか聞いてみたけど


「お義父さんと私だけの秘密です。慎一郎さんこそお母さんと何を?」


と教えてくれなかった
だから、僕も教えないと言ったら、頬を膨らませながらトリップしていたけど
これからの長い人生で、いつかそれぞれのこの秘密を話すこともあるだろうと思ったら、彼女との結婚が幸せなものになると改めて実感した
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