お見合い結婚時々妄想
駅に着くと、美智子はもう待っていた


「美智子〜ごめ〜ん。待った?久しぶりだね」
「あっ、祥子。久しぶり〜。私も今来たところだよ。それより早く食べよう。私、お腹ペコペコ。さっき美味しそうなお店あったんだ。そこでいい?」
「うん、いいよ。私もあんまりまだ詳しくないんだ、この辺のこと。行こう行こう。」


美智子が見つけたお店は、イタリアンのお店で、ちょっとしたテラスがある、お洒落なお店だった


「うわぁ、お洒落だね。家の近所にこんなお店があるなんて……」
「せっかくだから、テラスの席で食べない?」
「うん!」


美智子の提案で、テラスの席に着いた私達は、注文を済ませた


「ホント久しぶりだね、祥子。元気そうで安心したよ」
「結婚式前はバタバタしてて、会えなかったからね。美智子も元気そう」
「当たり前よ。私はいつでも元気だよ」


得意そうに笑う美智子を見て、思わず笑った


「仕事忙しそうだね。ここって、美智子の会社からは結構離れてるよね」
「実はねぇ……」


何やらふふふと怪しく笑っている


「何よ、早く言いなさいよ」
「うちの会社と祥子の旦那さんとこのF社が取引することになって、私が担当者になったのよ」
「えぇ〜そうなの?」
「まあでも、祥子の旦那さんとは仕事上全く関係ないから、会わないと思うけどね」
「そうなんだ。でも凄い偶然だね」
「そう。だから、皆川さんの会社での情報を聞き出したら、祥子に報告するね」


美智子はニヤリと笑った
いやいや、怖いですから、美智子さん


「でも、安心したよ。祥子幸せそうだから」
「え〜何それ?」
「何年あんたの友達やってると思ってんのよ。顔見ただけで分かるわよ。よかった、とりあえずまだ、皆川さんのこと呪わなくてよさそうね」


そしてまたニヤリ


「もう怖いってば、やめてよね!あっ、でも慎一郎さんが言ってたよ。『ゆっくりお話したいから、家に遊びに来てほしい』って。」
「ホント?是非伺います!って言っといて」
「分かった。言っとくね」


そうこうしているうちに、注文したものがきて、二人で食べ始めた


「ねぇ、祥子たちって、家族計画どうしてんの?」
「ぶはっ……」


突然の美智子からの質問に、吹き出してしまって、せっかくのパスタを鼻から出すとこだった


「ごめんごめん。大丈夫?」
「もう、大丈夫?じゃないよ。なんなのよいきなり」
「いや、ちょっとね……」


いつになく歯切れの悪い美智子に、思い付いたことを聞いてみた


「何?もしかして、晃平君と何かあった?」
「うん……」


美智子が歯切れが悪くなったときは、同い年の彼氏の佐々木晃平君絡みと決まってる


「晃平さぁ……全然結婚願望ないみたいでさぁ」
「ふ〜ん……って、美智子、結婚願望あったの!?」
「失礼ね!私にだって願望はあるわよ!!って言っても、祥子が結婚決まってからなんだけどね。本気で考えるようになったのは……」
「私の結婚?」
「そう、あんたの結婚」


正直、美智子に結婚願望があるなんて、びっくりした

今まで仕事第一で、そりゃ晃平君という彼氏もいたけど


「お互い、結婚にこだわってないから楽なのよ」


と、言っていたほどだ


「祥子ってさぁ、スピード結婚だったでしょ?最初は自分の状況についていくのに必死そうで、大丈夫かなぁ?と思ってたけど……」
「うん」
「で、結婚式までろくに会えなかったじゃない?で、久しぶりに結婚式で祥子に会ったとき、びっくりしたの。すっごく綺麗になってて」
「え?」
「その時思ったの。『幸せ掴んだ女は、こんなに綺麗になれるんだ』って」
「美智子……」
「それで、私も幸せ掴みたいって思うようになって……で、それとなく晃平に聞いてみたの、これからの二人のこと」
「……晃平君、なんて?」
「『子供が出来れば、考えないでもない。でも今、やっと仕事を任せてもらえるようになったばかりだし、正直結婚はまだ先のことだと思ってる』って、はっきり言われちゃったんだ」
「うん……」
「それで、私もこんな性格じゃない?で、思わず言っちゃったの『じゃ、避妊しないで!』って……」
「えええぇ〜〜〜?」


しまった!
大声で叫んでしまった!
お客さん、みんな注目してるよ〜


「結局、それから晃平と大喧嘩して、しばらく会ってないんだ」
「ふ〜ん…、そうだったんだ。って、それで、なんでうちの家族計画なの?」
「晃平には、あんなこと言ったけど、よく考えたら私、母親になる覚悟ってできてないなぁって、私も晃平と同じで、やっと仕事を任せてくれるようになったばかりだし、妊娠したら仕事も休まなきゃいけないし……そう言うのを考えたら色々とね」


美智子は私と違って、広告代理店で働くキャリアウーマンだ
もし、妊娠して産休を取ったりしたら、帰って来れる場所がないかもしれない
でも、女は考えてしまうのだ
30歳を過ぎるということは、子供を産めるリミットがどんどん近づいていることを


「で、うちの家族計画っていうより、慎一郎さんが子供のことどう思ってるのかを知りたいのね?美智子は」
「ぶっちゃけると、そうです……皆川さんは年上だから、参考にはならないかもしれないけど、男の人ってどう考えてるのかと思って……」
「慎一郎さんは、はじめから避妊しなかったよ。家族が欲しいからって」
「それって、結婚してから?」
「ううん。私達の場合、結婚前にあんまり会えなかったから、慎一郎さんと…その……」
「セックスしたのが?」
「もう、はっきり言わないで!……初めてしたのが結婚式の1ヶ月前だったから、避妊する必要もなかったし」
「祥子はそれでよかったの?もしかしたら、もう授かってるかもしれないんだよ?」


そうか、もう授かってるかもしれないんだ……


「もう、またトリップして……でも、いいんだね。祥子は。今の顔見たら、母親になることに迷いはないみたい」


はっきり言ったらそうだと思う
慎一郎さんとの赤ちゃんを授かるなんて、こんなに嬉しいことはない


「でも私と美智子は、状況が違うから、あんまり参考にはならないよ?」
「ううん、聞いてくれてスッキリした。ありがとね。私、もう行かなきゃ。今日は私のオゴリね。じゃ、バイバイ!」
「えっ、ちょっと美智子!」


そうして美智子は、伝票を持って嵐のように去って行った


「もうなんなのよ。美智子ほとんど食べてないし……ま、美智子らしいか」

一人残された私は、今度慎一郎さんと一緒に食べに来ようと思いながら、のんびりパスタを食べて、お店を出た時だった


「あれ?祥子?」


ん?と思って声がした方を見たら、慎一郎さんがいた

「慎一郎さん、どうしたの?」
「それはこっちのセリフ。今日は出かける予定でもあったの?」

どうしてそこで眉間に皺が寄ってるんですか? 慎一郎さん

「美智子から突然呼び出されて、ランチしてたの。さっきまで一緒にいたんですよ」
「そうなんだ」


あ、やっと笑顔になった
よかった

「もしかして、メッセージ見てない?」
「メッセージ?ごめんなさい、マナーモードにしてたから」


慌ててスマホを見ると、慎一郎さんからメッセージが届いていた


『午後から代休が貰えたので、今から帰ります』


と言うことは……?


「今日は金曜日だから、週末一緒にゆっくり過ごそう。やっと仕事が落ち着いたから、呼び出されることもないからね」


にっこり笑う慎一郎さん


やったぁ!久しぶりに一緒にいられる!
嬉しい!


「今から、買い物して帰りたいんですけど、付き合ってもらえます?」
「もちろん、じゃ行こう」
そうして二人で手を繋いで、買い物した


今日は、腕によりをかけて晩御飯作りますね!
慎一郎さん
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