Marriage Knot

そして、私たちは見つめあった。桐哉さんは、私の額、ほお、それから唇にキスをした。私は涙を吸った。桐哉さんの目も、少しうるんでいるように見えた。いつか見た孤独な少年の面影は、どこかに消えていた……。


桐哉さんは、私をソファに誘った(いざなった)。私は満ち足りた気持ちで深々と座った。彼はあのファイルをまためくっていた。そして、一枚のメモを抜き取った。

「僕はデザイナーズブランドを立ち上げようと思っています。留学して、さらに技術を磨いた結さんをチーフデザイナーに招聘しますよ」

「素敵……」

メモを見せてもらうと、たくさんの単語が殴り書きされていた。読めないけれど、きれいな筆記体だ。桐哉さんが前からのぞきこんで、一つの語を指さした。

「これが、僕と結さんのブランド名の候補です」
< 67 / 71 >

この作品をシェア

pagetop