『来年の今日、同じ時間に、この場所で』
次の日会議があるはずなのに、ベンは出勤してこなかった。


昨日の最後の台詞に少し期待して
いつもよりメイクに時間をかけたのにな。

昨日の彼女からの電話…
なにかあったのかな?


あれからベンと顔を合わせたのは三日後だった。
何事もなかったかのような挨拶を交わすと
いつも通りの仕事っぷりをベンはみせた。


やっぱり、アレも社交辞令だったのかな…。

昔から期待しては裏切られ…
ヤキモキしたり、嬉しかったり、
色々あったけど

期待は裏切られても、前向きになった今は
前よりも楽しい気がしていた。





お昼の時間になると
女子社員がベンをランチに誘っていた。

「前田さ〜ん。会社の近くに美味しいお店あるんですけど私達とランチ行きませんか?」


なぁに?あの猫撫で声。
どっから声出してんのよ…


「すみません。お弁当用意してきちゃってるので。」


お弁当?


「え〜〜残念ですぅ。それって〜愛妻弁当だっりして〜〜」


聞くなよー‼︎そういうこと、軽々しく!


「だといいんですけどね。」


綺麗に笑うベン。


「きゃー!笑った〜!可愛い〜〜」


盛り上がる女子社員達。


「次回は是非ご一緒しますね」


…え。ご一緒しますね?


やっぱりあの日私に言った言葉も
社交辞令だったのかもしれないな…


盛り上がる女子社員達を背に
私は社員食堂に向かうためトボトボとエレベーターへと向かった。


なによ、あれ。
女子社員達にチヤホヤされちゃって
あんな笑顔見せちゃったりしてさ。
ベンじゃないみたい!



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