光の向こう側へ
出逢い
ある日、アルバイトを終え帰ると目の前に父親が立っていた


「お前、こんな所で自由に生きてたのか?」
「はぁ??誰にだって自由はあるんだよ!」

何故住んでいる所がバレたのか心当たりがない。
引っ越しした事は誰にも言っていない。
引っ越した場所も実家からかなり遠い所なのにも関わらず父親は探し当ててやってきたのだ。


「ちょっと来い!!」
「いてーなッッ離せッッ!!!」

大声で怒鳴り髪の毛を引っ張られ引きずられた。
髪の毛がもげそうだ……


「大人しくしろ!!」

一瞬髪の毛から手が離れた時、逃げようとしたら殴られそのまま地面に叩きつけられた
視界が歪み頭がくらくらした。
倒れこんでいるとまた髪の毛を引っ張られそのままずるずる引きずられた。



こんなに大騒ぎになっているのに駅から遠い立地条件の悪いボロアパートだけあって、人っ子一人いない

このアパートにどれだけの人が住んでいるんだろうか……
誰も助けてくれないもんな……。

そんな事初めからわかってる。どうこの状況を切り抜けようか?


「おい、オッサン。その子を離せ。」

?!?! 

頭上から低い声と鈍い音がした瞬間、誰かの腕の中にすっぽり収まっていた。


「は?!お前誰だよ!!」
「誰でもいーだろ」

大声で怒鳴る父親は恐らくもの凄い血相で睨んでいるだろう
謎の男は平然と冷静そうな声で表情は見えないがその声からは一切感じない喜怒哀楽
真逆の感情が対立する

「すかしてんじゃねーよ」

振り返り顔を上げたと同時に振り落とされた拳
殴られるッッ!!!!!!咄嗟に目をつぶる。

「くそっお前ら覚えておけよ!!」

あれ?!?!?
殴られる前に父親は大声で言い捨て立ち去った。
足跡が少しずつ遠くなる。張り詰めた空気は和らぎ少しずつ心が落ち着いた


……そういえば何をしたんだろう?
男は殴られることなく父親を追い払った

「大丈夫?」

話しかけられたが頭がくらくらして何も考えられない
黙っているとその人はしゃがんで目線を合わせてくれた

 「立てる?」

ゆらゆら揺れる視界に耐えきれず目をつぶる


「ちょっとごめんね。」
「えっ?!!?」

助けて貰っててこんなこと思うのも良くないんだけど、この人の事信用できない
もしかしてこの後、なにか起こったらと悪い想像が頭を支配する。
耐えきれず目を開けると、男がお姫様抱っこをしてぼろアパートの階段を上がっていた

ぼんやり見える見慣れた景色。男はガチャッと鍵をあけ中に入っていく。


此処は私の部屋?!じゃない…………男の部屋だ。
初めてボロアパートの住人に出逢った。一度も見たことなかったのにこんな日に会うなんて
それを幸運というべきなのかどうか今はまだ分からない






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