ずっと前にね

俺が嫌いになった人

母さんが、消えたんだ。朝起きるともう、姿も思い出の家具もなかった。ソファとテレビだけになった居間にはカーテンもレースも、カーペットさえなかった。救いは台所の冷蔵庫と中にある食糧、調理器具、調味料があった事かもしれない。そういえば、洗濯機もあったかな。
いつも通り中学へ行ったけれど、女子も男子も俺をバカにして同情してきた。父親一人で大丈夫か、海外出張が多いんじゃないのか。珍しい事はなんでも聞いてきた。
父親の海外出張中、母親は俺の事を見向きもしてくれなかった。ボロボロに破れて穴が開いた靴にも、ゴムが伸びてよれよれになったTシャツにも。あと、冬に着るダウンジャケットも中の羽がくたっている事を見て見ぬふりをする。
あぁ、愛されていないんだ。俺が醜いから。テレビや雑誌に出ている俳優やモデルのように格好良くないから。だから、面食いである母さんは俺を見てくれないんだ。最低限の物しか買ってくれないんだ。
他の男の人を家の中に連れ込んだ時もそうだった。俺を邪魔物扱いしては部屋に閉じ込めて出られなくさせた。
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