ずっと前にね
可愛いと思われるかは二の次だった。迷惑じゃないか、気持ち悪いと思われないか。不安が過って甘える事なんて出来なかった。

「涙目、なってんだろ・・・?」

明かりと言えば月明かりだけで視界が悪いはずなのに。風邪で体が辛く、周りの事なんてよく見えていないはずなのに。柏崎先生は私の事を何でもお見通しだった。
私が泣きそうになっている事。ちゃんと堪えきれていなくて涙目になってしまっている事。何もかも全てお見通しなんだな。否定した所で無駄な努力なのかもしれないな。

「どうして分かるんですかぁ・・・?」

堪えきれずに1滴、涙が流れてしまったらもうアウト。ピンッと張っていた糸が切れてしまったようにまた1滴、また1滴と涙が溢れ始めてしまった。一度流れてしまうと中々収まらない涙。止めなくちゃいけないのに。
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