ずっと前にね
最低な事をしてしまったんだ、私。祖父母に最低な事をしてしまったんだ。そして、そのせいで柏崎先生にも嫌われてしまった。うざがられてしまった。吹奏楽部の皆の期待も裏切ってしまったんだ。

「んなこたねぇよ。少なくとも、俺は嫌いになんてなってねぇ。心配すんな」

優しく笑う柏崎先生が私の心をもっと苦しめた。柏崎先生の心の広さを疑ってしまったと絶望し、本当は体目的なのではないかと疑って怖くなる。
柏崎先生はそんな人ではないと分かっているのに、信じたいのに疑ってしまうのは私の心が汚れているからなのだろうか。それとも私が柏崎先生なら大丈夫だと男性と意識せずに仲良くなろうとしていたからなのだろうか。柏崎先生がいてくれたら乗り越えられるかもしれないと思っていたからなのだろうか。
何もかもを欲張った私が悪いんだ。祖父母にバレないように嘘を吐き続けて。乗り越えるために柏崎先生を無断で利用しようとして。
< 73 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop