ずっと前にね
何も考えられなくなって、瞬きしたら病室の天井だったんだ。どういう経緯で病院に運ばれたのかは分かったけれど、その事実が朝の出来事を嘘ではないのだと証明してくれた。
期待していない母に、体と愛を求める義父。体以外求めてこない兄に姉という事以外分かっていない弟。無償で私を愛してくれる祖父母。
両親のそばにいたら自分が壊れてしまうという事がはっきりしていた。だから、祖父母の許へ逃げてきた。なのに、わざわざ会いに来るなんて思ってもみなかった。きっと今まで通り聞き流して見に来ないのだと思っていたのに。
祖父母が悪い訳じゃない。二人はただ、私の置かれている状況を知らなくて皆を呼んだんだ。母とは親子だから来てあげなさい、義父とは血が繋がっていないんだから来てあげなさい。そんな気を使ってくれたんだよね。
私が言わなかったから。私に言う勇気がなかったからこんな事になってしまった。二人の寿命を縮めてしまうような事をしてしまった。
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