内実コンブリオ

内心でただ一人、和んでいた自分がふと我に返ると、先輩と目が合った。

先輩は少し躊躇う様な表情を見せたかと思えば、突然に強い意志を持つ様な目になっていた。



「あのな、これだけは覚えときなよ。

無理強いでは、誰もついて来やん。でもな、一生懸命頼まれて断る人、嫌に思う人はそうおらんからな」



「え…」

「わかったら、『はい』やろ」

「あ、はい。でも、なんでそんな突然…」



なかなか理解できていない自分に向かって、先輩はニカッと愉快そうに笑う。

いつかの様に。



「別にええやん」



そうして、一人置いてけぼりにされそうになった自分は、慌ててその背中を追いかけた。
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