内実コンブリオ

栗山くん…

え…ちょっと待ってっ?!

何が一体どうなったら栗山くん?!

どうして出てきた?!栗山くん!

…確かに優しい時は優しい。

でも、彼は野球部で。

あれ…?野球部だったら、何なんだろう。

わからない。だけど、あの人たちは苦手。

この夏休みに入る直前にまでからかわれた。学校の駐輪場で。



「付き合ってください」



「―…っす」



2つ目の言葉が聞き取れなくて、ずっと気になっている。

どうでもいいこととは、わかっているのに。

実は、ずっと気になっている。

嫌なことは忘れようっていう精神ではいるけど、あの事だけは妙に忘れられなかった。

自分でもわからない。

そして、あの事を思い出せばからかわれていることはわかっているけど、何故か胸の奥の方が変な感じになる。

これもどうしてなのかわからない。

わからないことだらけ。

栗山くんのことが忘れられない。



「華ちゃん!大丈夫?顔が怪人十二面相やったで。どうしたん?」

「いや、何でもない!」

「そっかぁ、その子の事を想ってたんやな」

「ちがうって!」



そっか、そっかと笑いながら懲りずに向かってくるゆきちゃん。



「誰?名前なんていうの?はけっ!はけよぉ!」



言ってもきっとわからないのに。

自分は必死にゆきちゃんを押さえ込んだ。
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